日本では、新生児とその母親は通常出生後1週間入院し、その間に必要に応じて牛乳粉ミルクを摂取する。
一般的には母乳育児が推奨されているため、退院後に牛乳粉ミルクの摂取が中止されることも少なくない。
これらの乳児の中には、牛乳を含むベビーフードや牛乳粉ミルクを再び摂取しはじめたときに
牛乳アレルギーを発症してしまう乳児がいる。
過去の研究でもアレルギー性物質を早期に摂取させることでアレルギーの発症を予防できる可能性があると報告されている。
目的
本研究の目的は
早期の牛乳粉ミルク摂取がアレルギー発症を予防できるかを検証することである。
実施施設:沖縄の4つの病院
対象:生後1ヶ月の乳児
方法:牛乳粉ミルクを摂取する郡と摂取しない郡にランダムに1:1に振り分ける。
3, 6ヶ月後に経口摂取試験を行いアレルギー発症の有無を判定
摂取する郡:
生後1〜2ヶ月間、母乳に加えて
毎日10mLの牛乳粉ミルク(牛乳タンパク質換算で150mg相当)を摂取
摂取しない郡:
生後1〜2ヶ月間、母乳のみで育児
牛乳粉ミルクを可能な限り摂取しない(少なくとも1ヶ月に10日未満)
摂取群242名中2名(0.8%)、摂取しなかった群249名中17名(6.8%)が
生後6カ月時点の経口摂取試験により牛乳アレルギーと判定された。
(RR = 0.12; 95% CI = 0.01-0.50; P < 0.001)
本研究で生後1~2ヶ月の間に少量の牛乳粉ミルクを毎日摂取することで、一般集団から募集した乳児の牛乳アレルギー発症を予防することを示した。
加えて母乳育児に加える形で行っているので非常に実用的である。
過去の研究では
アトピーリスクの高い新生児を対象とした研究で
生後3日以上母乳で育った乳児では0.7%
生後1日から牛乳粉ミルクを摂取した乳児では6.6%が牛乳アレルギーを発症したとの報告がある。
本研究でも生後3日間牛乳粉ミルクを摂取しなかった乳児はアレルギーを発症していなかった。
他の研究から得られるデータからも
出産後の入院中(生後7日間)はむしろ牛乳粉ミルクの摂取がアレルギーのリスクを高めてしまうと考えられる。
この現象は
生後間もない新生児はアレルギーを制御することに重要な働きを持つ腸内細菌叢が未発達であるからではないかと考えられている。
また、摂取量との関連を分析したところ
本研究において生後1〜2ヶ月の間に週70ml 以上の牛乳粉ミルクを摂取した乳児は
全員牛乳アレルギーを発症していなかった。
生後1~2ヶ月の間に毎日少なくとも10mLの牛乳粉ミルクを摂取することで
アレルギーの発症を予防することができる
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