筋骨格系の痛みは、世界的な健康問題の代表的なものである
世界の3人に1人が筋骨格系の疾患を抱え、痛みや障害を特徴とし、生活の質の低下を招き、大きな経済的負担となっている
痛みに対して医療用麻薬や抗うつ薬がしばしば使用されるが依存や中毒の問題もある
運動はもともとガイドラインなどでも推奨されているがストレッチや筋力強化など幅広すぎて
具体的にどの運動がどのくらい効果があるのか示してはいなかった。
有酸素性身体活動、疼痛感作、筋骨格系疼痛をキーコンセプトとした6つのデータベース
・OVID MEDLINE
・OVID Embase
・OVID EBM Reviews Cochrane Central Register of Controlled Trials
・OVID PsycINFO
・CINAHL
・SPORTDiscus
から成人(18歳以上)を対象とした研究を抽出
疼痛に関する評価は圧力または熱に対する疼痛の閾値(PPT/TPT)を用いて評価した。
特定の疾患(繊維筋痛症やCRPSなど)を対象とした研究は除外している
運動メニュー
6つの研究がサイクルエルゴメーター/2つがトレッドミルウォーキング/3つがノルディックウォーキングを運動メニューとして取り入れていた。
VO2(最大酸素摂取量)とHR(心拍数)を用いて負荷を評価しメニューに組み込んだ
(例:max VO2 50%で5分間開始し、max VO2 70%まで増加させて20分間行い1セット)
疼痛閾値の評価
適用される圧力は、1cm2または2cm2にわたって1kg/sまたは30kPa/sの割合で増加した。
一方、熱に関する評価ではサーモードを前腕の皮膚に貼付し、40℃から開始し、耐性に達するまで毎秒0.5℃の速度で上昇させ、温度を記録し、参加者が痛みの強さを評価するという熱痛試験が行われた
抽出された研究の対象者は合計590名(平均年齢は34〜56歳)
研究ごとに対象患者の定義が異なっていた(腰痛が3ヶ月以上継続しているもの/非神経性の疼痛が1年以上継続しているもの/1ヶ月以上継続する頸部痛などなど)
11件の研究のうち、7件が平均PPTを、2件が運動前後の平均疼痛評価を報告しており、有酸素運動後の疼痛感受性の改善率を決定することができた。
PPTの平均変化に基づいて、0.6%(2.2%、24.1%)という中央値(最小、最大)の痛み感受性の改善率を計算することができた。
対象となった11件の研究では、有酸素運動を検討した場合、すべて鎮痛効果が報告されている。
それぞれの運動メニューをまとめると下記のようになる。
50~75%のVO2、または66~85%の最大心拍数に基づく少なくとも4分間の歩行またはサイクリングを含む運動が、鎮痛効果を達成する可能性がある
結果をまとめた図
有酸素運動が痛みの感受性を低下させるメカニズムについては、いくつかの説が提唱されている。一つには内因性オピオイドとβ-エンドルフィンを分泌して痛覚減退をもたらす
また、下行性侵害受容抑制機構を活性化して痛覚 を減退させることも一因かもしれない。
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