
さくらだ先生、実家の父親が自治体から手紙が来てたみたいなんですけど

あー
これは骨粗鬆症の検査を呼びかけるお知らせですよ。
受けてみてはいかがですか?

うーん。父は病院嫌いですし、たぶん行かない気がします。
それに骨が弱くなるってだけじゃないですか。
また来年でいっかなー

可能であれば早めに検査した方が良いですよ。
それに骨折はただ骨が折れて痛いってだけでもないんです。
そこにはいろんな危険が潜んでたりします。

というわけで、今回はこんなテーマを持ってきました。
骨粗鬆症 その危険と対策
- 骨粗鬆症とは骨がスカスカになって骨折になりやすい状態
- 骨折だけでなく死亡率を2倍以上上昇させてしまう。
- 飲酒や喫煙習慣がある人は50歳から検査を受けた方が良い。
- 対策は飲み薬と食事、運動(下に具体的な行動を記載してます)
骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大することで骨折の危険性が増大する疾患である
WHO(世界保健機関)
簡単に言えば
骨がスカスカになって骨折しやすくなる状態 です

でもあんまり身近にいる人で骨粗鬆症って診断されているの見たことないわ
数が少ないんじゃないかしら

そう思うのも無理はないですね(現に診断されていない人も多いと思います)
それではこちらをご覧ください

これを2005年の年齢別人口構成に当てはめると40歳以上の成人において骨粗鬆症患者は
男性は12.4%, 女性は26.5%と推定されます。
つまり
男性では8人に1人、女性では4人に1人が骨粗鬆症患者ということになります
どうでしょうか?
意外に多いと感じてくれれば幸いです。

でもさ、要は骨折しやすくなるってだけでしょ?
確かに痛いかもだけどそんなに力入れて予防することじゃないんじゃない?

確かにその言い分は一部正しいと思います。
しかし付け加えるとするなら骨粗鬆症は死亡率を高めてしまうことにその危険性があると私は考えています。

上の図もガイドラインから引っ張ってきたものですがざっくり説明すると
骨粗鬆症の人はそうでない人に比べ死亡率が2.58倍になったというものです。
これは骨折の中でも大腿骨近位部骨折のリスクを高くしてしまうことが原因と考えられます。
実は、、大腿骨近位部骨折は大半の悪性腫瘍(がん)よりも死亡率が高いのです。
まず足の付け根を骨折すると足全体を動かせなくなり寝たきりの状態になりますよね。
その結果、寝たきり状態が心臓や肺の機能を弱らせたり、血栓や肺炎などのリスクを高めます。
この負の連鎖が高い死亡率を叩き出しているのです。
では具体的に数字で表すとどのくらいの人が亡くなるのか。
それは、、、
大腿骨近位部骨折を受傷すると1年以内に10.1%の人が亡くなる。
J Orthop Sci 2006; 11: 127-34.
いかに予防することが大事か実感いただけましたでしょうか。

長生きするためにも予防が大事なのがわかったわ。
でも何歳から検査を受ければ良いのかわからないし、困るわ

明確に決まりがないのも事実ですね。
国が義務化したりすれば多少は違うのでしょうが、そこまでは対処できていないのが実態です。
なのでこうやって医師一人一人が啓蒙していく必要があると考えています。
下に検査が推奨される人をまとめた図を載せておきますね。

ざっと説明すると
腰、大腿骨、手首、肩の骨折をしたことがある人は年齢に関わらず→
危険因子(飲酒・喫煙習慣)があれば50歳以上から→
生活習慣が問題ない人なら65歳以上(男性は70歳)から→
骨粗鬆症の検査を行っている病院を受診することが推奨されます。
ちなみに診断のための検査はレントゲンを撮影するだけです。(腰か大腿骨の撮影が一般的)
骨粗鬆症と診断された場合は骨粗鬆症治療薬の内服が開始されます。
薬物治療により、その後の骨折のリスクを30〜50%低下させることができるとされています。
また食事も重要です。
ビタミンDやカルシウム、ビタミンKなどが重要になります。
不足は骨粗鬆症のリスクとなりますが多ければ多い程良いわけではないので過剰に摂取する必要はないことに注意してください。

たまに根拠もなく過剰な量のサプリメントをおすすめしている人をSNSで見かけますので
くれぐれも注意してください


運動も予防には欠かせません。
1日30分のウォーキングや大腿四頭筋の筋力訓練(寝ながら足を上げる体操)が骨密度を上昇させたとの報告もあります。

いかがだったでしょうか。
自分に関係なくても両親や祖父母でまだ検査してない人は山程いるはずです。
これを機に、ご実家に連絡してみてはいかがでしょう。
Comments